VR1111年生まれ 男性
ヨナス・ブロイアーは、スレッドのアムス周辺に住む、男性である。元々は農民の家系であったが、「言語の再統一化」を謳うファーブルの塔の建設に携わる人夫の募集に伴い、東側地域の門番の職を得た。
来歴
そもそも、ファーブルの塔とは何なのか、具体的にどのような目的を持っているか、という点については、正直な所、携わる人夫の誰一人として分かっていないのが現状である。
塔の建設地のフラマント山脈の周辺住民に示された「言語の再統一化」という主題にしても、実際の所、それがどのような過程を経て執り行われていくのか、今の所、全く誰からも把握されていない。ただ、塔の建設に直接ザン教が関わっているのは事実のようで、スレッド、イス、エロイーズそれぞれの国境付近の山間の広大な敷地には、日々、数え切れないほどの人夫たちや物資が運び込まれてくる。
イスのガジアンスからはコンクリートと塔の基礎をつくるための職人が、ディレリアのエスクケイルからは施工を指示するための建築士が、エロイーズのマンションの平原からは壁に特別な上塗りを施すための漆喰の調合者が、遠くパルスプラントのアルラーフからは来訪者たちの食料を維持するための芋の運搬が絶えず、所在地のスレッド周辺に住む農民の一部は、ヨナス・ブロイアーと同様に現地での交通整理、及び警備のために駆り出されているのだった。
一方で、それぞれの地域から来た別々の民族が話すそれぞれの言語、ディレリア人のアルトナ語、パルスプラントのブラフ語、スレッドのレイス語、エロイーズのスカラ語、イスのハザ語の統一、という塔の主目的は、繰り返しになるが、現時点で行われる気配は全く無い。
初めから我々の世界で言う「方言」程度の相違しかなく、各々の話者同士の「隠語」の部分が通ずるか通じないかくらいの不便さしかもたらさないフロウタールの言語の区分が、再統一されることに一体何の意味があるのか、公布された初めの要件を無視したまま各人は各人の作業を続けている。
だから、VR1140年に着工し(VR1150年現在で)十年間もの間、人と物の双方が延々と投ぜられ続けてきたこの塔は、現時点では塔というより、2キロメートル四方という広大な敷地をほぼ正方形に近い形で囲う「空虚な」壁に等しい、と(エスクケイルにあるザン教に批判的な向きの中には)断定する者もいるほどである。
仮に、まだ未完の部分が多い南側の山脈方面からこの敷地内を覗き込めば、中心にまだ何も構成されていないのに拘らず、周囲を覆う壁を設立しようと努力する人間たちの姿が、あたかも蟻や昆虫の類がせっせと巣作りをするのと同じような姿形で伺い知ることができるだろう。前述したザン教の批判者に言わせれば、この、中に何が据えられるのかは全く知りえないまま、ただ連携して働こうとする人々の姿こそが、ヴィジョンクライシス、という目前に迫った危機を利用しようとする「無意味な」公共事業の象徴なのである。
このような有様だったので、現地の門番、当のヨナス・ブロイアーにとっては、毎日の仕事がただ単調だった。農家には農家の、食物を収穫したり種を撒いたり、日々の天候を憂いてみたり、という変化が暮らしの中にはあるだろうが、29の歳から塔の門番として働き続けているヨナスにとっては、ただ同じ場所に立ち続けていることのみが必要とされている。
「いや、それにしてもさ、あの昼頃から出勤してくる小間使いだか作業員だかの女の足、マジでヤバイからね。あそこまできれいな女の生足拝めるってだけでも、この仕事続けてて正解なのかも知んないね」。ヨナスは日々、ただ通り過ぎ去っていく人夫たちの姿を眺めながら、同僚にこう漏らしているという。ファーブルの塔、という特殊な作業環境に身を置いているにせよ、彼の感じる退屈や疲労は、現代の我々にとっても理解できる極めてオーソドックスなものなのかも知れない。……彼は今年でもう39歳になる。
「何言ってんだよ、南門に午後三時頃に来る女の乳揺れのほうがヤバイに決まってんだろ」。休憩中に、別の門番がそう答える。以下、単調な毎日の無限ループ、が続く。
日々の行動と能力
1 門の前に立つ
2 周囲を警備する振りをする
3 荷馬車を導き入れる
4 女が目の前を通り過ぎるのをじっと見つめる
5 エスクケイルの司祭に敬礼する
6 疲れてきた足を組み替える
S | P | E | C | I | A | L |
4 | 3 | 5 | 5 | 3 | 7 | 4 |
闘争 | 華美 | 飽食 | 享楽 | 不寛 | 勤勉 | 渇望 |
2 | 4 | |||||
空間 | 時間 | |||||
6 | 0 | |||||
保持スキル | 警戒 |
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