VR1138年生まれ 女性
アナエル・エリメは、イスのアフォルム出身の女性である。割と裕福な商人階級の家庭の次女であったが、1143年のサンギュリエ陥落に伴い、帝国の特例措置として遙か東方のザイスに移住した。
来歴
彼女が、そもそも何故単身でエロイーズの首都に移送させられたかと言うと、それは、イス帝国の新たな制圧者となったミラジ教徒の信仰が、白皮症を極端に忌避し、生命の危険にさらされることが予測されたからである。
他方で、フロウタールの圏域では、白皮症は全くその逆様に捉えられていて、白化個体は「全く、何者でもない存在」として定義されている。
光合成のできない突然変異体の植物のように、原罪を体現するための色素を合成できず、ただ安らかに朽ち果て、死んでいく存在。そうした意味付けを与えられているが故の、周囲からの無関心こそが、白色固体として生まれた者の正確な位置づけだった。
前述の通り、1143年にザイスに移り住んでからは、アナエルは「全く、何者でもなく」扱われながらも、そうしてひっそりと暮らす習慣を身に着けたようで、特に地元のバレエシューズメーカーからは、その「無個性の」特徴が重要視され、足型の基礎の平均を割り出すのに協力を呼びかけられたりもした。
さらにその過程で、アナエルは自身の白色の皮膚を活かすための生業として、プロのバレエダンサーを志すようになる。規律正しく、個性の表現のためにはまず徹底した基礎の追求こそが必要とされる芸術ジャンルであれば、評価されるに値する成果を上げられると考えたのだ。
だが、先回りして予想されるように、アナエルは周囲から「評価される」には至らなかった。技術的に取り立てて評価するべき所もなく、ただ単に凡庸だったのだろうが、彼女は初めから、「全く、何者でもない」存在であることを、生まれながらの皮膚の特徴として宿命付けられていたのだった。だから、彼女がどんなに努力しようと、その洗練されていく手や足の振る舞いが美しい、などと先生から褒められる可能性はないに等しい。
VR1155年6月、彼女は通っていたバレエスクールからの退所を決意する。その数日後には、おそらくバレエも止めてしまうだろう。後にはやはり、どうせ何をしても「特別評価するに値しない者」、「特段、何者でもないもの」という彼女の印象だけが周囲に残されることになる。
その後、彼女が一体「何になるのか」は正直、今の所は誰にも分からない。自身の中に何か他の才能を(演技をしたり、絵を書いたり、はたまた喫茶店でアルバイトをしたり)、見出すことになるかも知れないし、またそれらへの取り組みが結果として生業にならないことを嘆くかも知れない。ただ一つだけ確かなのは、彼女がまさに自分自身にしかない個性を見出そうとした次の瞬間に、フロウタールの圏内の人間はまっさきにそれを否定しようとすることである。
エリメは、今日も窓辺に折り重なったカーテンを見ている。彼女が、その場に埋没して完全に色を失ってしまうのも、最早時間の問題なのかも知れない。
日々の行動と能力
1 将来を憂う
2 喫茶店にアルバイトにいく
3 紫外線対策のクリームを塗る
4 シャワーを軽く浴びる
5 鏡に映る自身の像を確かめる
6 色の鮮やかな服を買いに出かける
S | P | E | C | I | A | L |
2 | 9 | 4 | 3 | 6 | 6 | 9 |
闘争 | 華美 | 飽食 | 享楽 | 不寛 | 勤勉 | 渇望 |
4 | 1 | 1 | ||||
空間 | 時間 | |||||
1 | 5 | |||||
保持スキル | 舞踏 | 給仕 |
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