高速で道を走りながら宇宙と交信する校長先生「フェリックス・ラロックス」

Mimesis of Frautal

VR1102年生まれ 男性 色相の転換者

フェリックス・ラロックスは、スレッドのネイ・グロウ出身の男性である。深夜から早朝にかけて道を散歩する時、異星人との何らかの繋がりを自身が保っていると信じている。

彼は現在、スレッド諸邦内のチェシン東高等学校の校長である。48歳、という比較的若い年齢での校長への就任には理由があって、それは彼が、スレッドの若者の育成に長年身を投じるきっかけとなった二十年以上前のある出会いによっている。

当時、フェリックスが教師になるには、邦の決まりで大学を卒業してからの5年間、諸国を行脚して見識を広め、教育者としての実習経験を積む必要があった。その際、本来なら西はイスから東はエロイーズ、北はディレリア半島から南はパルスプラントのさらに以南まで、本国のスレッドを出て各国を一年ずつじっくりと見て回り、その成果を各国の出向所に報告し、晴れて帰国の途に着けるはずなのだが、何故か、まだ年若いフェリックス・ラロックスは研修先として認められていないハングヘッドアイランドを自身の行き先として選んだのだった。

ここに彼なりの何らかの意図があったのか、ただの気まぐれだったのかは定かではない。確かなのは、この首吊り島での3年間が(その後結局、他の五カ国を回る再研修を行わさせられる羽目になるにせよ)、彼自身の運命を決定づけた、ということである。この点については、フェリックス自身が42歳になるときに校長として赴任するチェシン東高等学校への挨拶の中で明確に述べている。

では、具体的にそこで一体何を学んだのか、というと(ここからは彼と親しい教職員研修時代の同僚の話からのまた聞きになるので不確かな部分も多くなることを承知願いたい)、フェリックスは首吊り島での三年間、ひたすら肉体労働をしていた、というのである。

テルノ近郊の寄せ場で、アガリッシュ山のフェスティバル会場設営の為の山地開拓の人夫として雇い賃を稼ぎ、そしてそこで得た金の全てを、風俗に突っ込む。彼が殊更にハマったのは、ディレリアのユルトに本店を持つソープの二号店で、マグロ漁船の乗組員のためにマグロ女ばかりの集められた「インセンス・イノセンス」という店のスジャータ・パイという女だった。

上記のようなことを、赤裸々に友人に語ること自体、翻せばフェリックス・ラロックスの性状を表しているとも言えるが、とにかく引き続いて彼の語ることには、どうやらそのスジャータ・パイという女は、なんと、宇宙人と交信していたらしいのである。

スジャータは、テルノ近郊の蛸部屋で日夜自分を買いに来る男どもの一物を吸い上げながら、この世界のものではない何か、との繋がりを確かに感じていた。フェリックスがその肢体を貪るときでさえも、その感応は完全に同様だった。

当時を振り返ると、陸上競技の元特待生だったという彼女の体の硬質な生臭さが今にも漂ってくるようだ、と自慢げにフェリックスは友人に語る。マグロ体質のまま何かをこらえ切るように実を悶えさせる彼女の仰け反った上半身が、大宇宙に繋がっていることを確かめられさえすれば俺はそれで満足だったんだ。と、続ける彼の感傷は我々には即座に想像しがたいものだが、快楽の只中で溺れていた当の日雇い人はというと、空間神と時間神を信奉するザン教の思想より、スジャータの信じるこの世界のすべてを超越した異星人の存在の方を信じ込むようになってしまったようなのである。

……………………
同時にこの頃、彼の色相の転換者としての体質も顕在化したようである。フェリックスの場合は首吊り島でのスジャータとの出会いを通し、その女が鍛え上げてきた敏捷性を引き継ぐ形で、膝下からふくらはぎまでを真っ青に染め上げることで、計らずも初めての「転換」を経験する。

そうした経緯を経て、ちょうど首吊り島での生活が三年を過ぎた頃、フェリックスはふと思い立ったように、一度祖国に帰り、さらにそこから再び教師になるための研修の旅を始めている。男が女に飽き果てるのに3年はちょうど良い期間と言えるかもしれないが、結局の所、彼が獲得した色相の転換者としての健脚もその後の旅路にはプラスに働いたようでもあり、さらに五年後、30歳になる頃には外地での教育実習を終え、本来目指していた教職員として高等学校で働き始めることになったのだった。

VR1142年、その後の勤務態度が極めて良好だったことも評価され、彼はとうとうチェシン東高校での校長職へと就任するに至る。ただ、このチェシン東高校は、別記事でも紹介したとおり、学生たちの勤勉さとはまた別の事柄で有名になってしまう学校でもあるのだが……。

ヒューズ・フィリオンの突然の死、の直接の当事者であるフェリックス・ラロックスは、何も意図して彼を殺したのではなかった、と言う。フェリックスはいつもの通り、事件当日の朝も、日課である超高速での散歩を欠かさなかっただけだった。

ハングヘッドアイランドに居た頃に毎晩抱いていたマグロ女から引き継いだ足で、調子の良い時には時速40キロにも達しようかという速度を記録し、たまたま道端を早起きして歩いていた、同僚の、音楽の授業を愛する男に激突してしまっただけだった。

だが、それにも拘らず道端には人が倒れている。彼はどうやら、「何か」によって強い衝撃を受けたらしくも見える。これも宇宙人の仕業か、その時、フェリックスはついにそう思った。もしも俺が朝散歩しているときに確かに宇宙人が監視しているなら、その経路上にいる男と俺が出合い頭に激突した途端に当該対象を瞬時に連れ去り、何かをインプラントした挙げ句地面に叩きつけるようなことも場合によっては可能に違いない、と。

勿論、上記のようなことを真顔で話しても誰も信用しはしないだろう。実際、彼自身の告白を聞いた一部の人間は、宇宙人によってヒューズ・フィリオンが殺されたなどと信じはしなかったし、また、フェリックスがガチで狂っている宇宙人信奉者であることを信じもしなかった。要は、あからさまに漏れ出そうとしていた「真相」は辛うじて誰かの流した質の悪い冗談、の範囲で収められていたわけである。

ただ、この生徒たちの間で流れ始めた「馬鹿馬鹿しい話」を真面目に信じ始めた人間が一人だけいる。それが、別記事でも言及したヴェロニカ・カイセである。彼女は唯一、フェリックス・ラロックスが完全に狂っていることを、自身がヒューズ先生の死因へたどり着くことへの確信とともに、急速に信じ始めている。

一日の行動の優先順位

1 早朝、散歩する

2 宇宙人と交信する

3 首吊り島での快楽を思い出す

4 学生たちを見守る

5 ビジャ・チェシンの弱さを嘆く

6 新しい教師を選任する

SPECIAL
5367498
闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
1113
空間時間
51
保持スキル労働教育放浪

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