嶺井、戸柱、高城へ捧ぐ配球論その3:実際の運用編

投稿者: | 2018年1月31日

さて、ここからは前項までの内容に対して
想定されうる幾つかの批判、に
勝手にお答えする形で、
配球の基礎論の実際の運用について
記述していきたいと思います。

まず真っ先に考えられるのが、
はじめに不確定要素として排除した、
打者側の読み、を極めて強く
保持しながら打席に立つバッターに対しては、
そもそも細やかな配球の流れ、などは
一切通用しないのではないか、という批判です。

これは大いに有り得るでしょう。
要は、相手バッテリーがどのような攻め方をしてくるにしても、
一切動じず、
ただひとつの球種とコースに絞って
待ち構えてくるような打者のことです。
実際の勝負の場面では、捕手は、
このような打者に対して、
捕手の側からも対抗して、
延々とその待球を外し続ける、
という対策しか施しようがないように見えます。

勿論その対策自体は妥当なのですが、
それでは結局、
その勝負を観察する外野のファンの側からは、
ホームベース付近で何が起こっているのか、
全く判別することのできない、
プロ同士の勝負の世界、という纏めのもとに、
結果論へ回収されることを是認するしかなくなってしまいます。

と、それでは議論が進まないので、
この項の主題である、
捕手側から打者に積極的に規則性を提示しない、
もしくは、
打者の体の反応への効果を最大化する、
という2つの法則へ、
無理やりこの、
相手の待球を外し続ける、という
実際の場面での捕手の対応を変換してみます。

結論から言うと、
仮に同じコース、同じ球種を、
バッターの側が待ち続けているとしても、
(そしてそれを捕手側が経験則から読み取ったとしても、)
4球続けて同一のコースや高さ、もしくは緩急を
使い続ける必要はないでしょう。
この点を満たしさえすれば、自然と
内内、内外、外内、外外、
という前項で述べた異なったシークエンスを
組み合わせることにもつながります。

……そしたら、相手の読み玉を把握しつつ、
わざわざ相手が狙っている所へ投げろっていうのか、
というご批判があるかと思いますが、
端的にいうと、その通りです。

勿論、もう絶対的に一つの打席の中で
ただひとつの球種とコースに絞る、という
打者もいることとは思いますが、
ごく一般的には、
狙い球と逆側に三球続けて攻められたら、
あれ、俺の狙いがバレてんのかな、
と疑問に感じるはずです。

また、三球続けて攻められた球を見続けていれば、
(目でもつぶっていれば別ですが)、
そちらへの身体側の感覚が、
次に逆側に攻められたときの反応のズレとして、
十分な振れ幅を与えられていることにもなります。
ですから、4球続けて同じコースを
攻めない、という考え方には妥当性があるのです。

以前、谷繁がどこかの番組で、
現役時代に三球続けて同じコースに同じ球種を投げるな、
とコーチに言われて疑問に思った、
という意味のことを云っていましたが、
彼の疑問は全くその通り、だと思います。
三球目まではいい、だが4球目はダメだ、
というのが、この項で叙述する基礎論からも
導き出される結論ということにしておきます。

次に、この「読み」の問題から導き出される
当然の帰結として、
初球、いきなり相手の待ち球を狙い打たれたらどうするんだ、
という意見があると思います。

この批判に対する答えとしては、
わたしは、あえてオールドスクールな格言を持ちだして
対応したいと思います。
つまり、「一球ボール球から入って様子を見ろ」、
という奴です。
この考え方自体は、一見するとなんの妥当性も
内容に見えるのですが、
結果球として1球目を要求しない、ことによって
幾つもの利点があるとわたしは考えます。

まず、これは前項から幾度も記述している、
打者の体の反応に対する振れ幅、の問題です。
「見せ球」として内角、もしくは外角、に
大きく外せば、次に逆側を突くことによって、
その体の無意識の反応の部分を最大限生かせることになります。

逆に、この見せ球を要求しないと、
狙い球を極めて強く絞ってくる打者に対しては、
捕手側がリードを構成するまでもなく、
思うままの打者の能力を活かして、
仕留められてしまうことが多くなるでしょう。

ですから、一見無駄に見えるボール球の要求というのは、
次の球、その次の球、という連続した
捕手の配球の構成によって、
前項までで述べました2つの振れ幅、
打者の体の感覚をずらすということと、
打者の頭を混乱させる意味での配球からの規則性の排除、
を、最大化するための布石であるわけです。

そのようにして結果球を先延ばししていくことが、
一球を仕留める精度の高い打者に対しては求められます。
逆に言えば、読みを強く張ってくる打者に対して、
そのよみから微妙な分だけずらす、
という投球術、配球術も想定可能でしょうが、
それは本稿の記述の目的からは逸れたことです。

少し話が散逸仕掛けておりますので、
前項からのこのブログ記事の主題に戻りますと、
それは、
打者との勝負が即座には付かず、
結果球が一球一球先延ばしされていく局面において、
捕手側が、
投手にどのようなコースに何を投げさせるか、
という配球の流れを検証することです。

その場合、勿論どこかの過程で
結果は出るのですが、
そして、結果が出るまでの過程について、
捕手側の配球に齟齬がなかったのかを
検証する目的でこの記事は書かれているのですが、
翻して捕手の側からしてみると、
最後までその結果が「出ない」、
ことを想定しているべきでしょう。

その最後とは、打者を追い込んだ後のことです。
ツーストライクまで、追い込んで、
三振、もしくは凡打に打者を仕留めることです。
ここにおいて、
捕手及び投手側の配球は、
わたしが繰り返し申し上げております、2つの幅、
打者の体の感覚へのズレ、
打者の頭の予想からのズレ、
を最大化する必要がある。

これが捕手側からの最適な解です。
キャッチャーはそれこそこの解から逆算するようにして
配球を組み立てなければなりません。

ただ、仮にそれが代数方程式だとした場合、
解だけが決まっている、
というのではあまりにも自由度が高すぎるので、
投手側にある程度のコントロールがある、と前提した上で、
打者側のタイプに応じた幾つかの組み立ての類型、
を考慮する必要があるでしょう。

次の項では、その打者のタイプごとの具体的な
組み立てを見ていきたいと思います。

配球論その4 へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です