色の付いた三角錐「ヴァルター・ホクサ」

Mimesis of Frautal

VR1100年生まれ 男性 色相の転換者

ヴァルター・ホクサは、パルス・プラント南部でよく見かけられている転換者の一人である。末梢の抹消財団の創設時からのメンバーとしても、一般には広く知られている。

まず、色の付いた三角錐、という彼の異名は、そっくりそのまま、彼自身の形状を遠目から見かけたときの印象を言い表している。

キュウリやヘチマ、スイカなど、ウリ科の植物を好んで食べるらしいヴァルター・ホクサは、パルス・プラントの一件以降、一部が禁輸された彼の国の植物群を求め、マラツブからザラマンド辺りの畑を渡り歩いているらしいのだが、上記の通り、問題は彼の姿形のことである。

元々、(VR1137年のグランドセルブスでの監獄爆破事件の前までは)、イスに集められた色相の転換者たちの目付役として監視をしていただけあり、ヴァルターは極端に「カラフル」なのである。

仮に、世間での色相の転換者に対する触れ込み通り、性交の傷跡が体中の色合いを変更させるなら、数十人、数百人単位での「転換」が彼の体の上で行われたのではないかと類推させるほど、ヴァルターの体は細やかな光の散乱を放っている。

一般に、夜になればなるほど体の輝きを隠し果せなくなると噂される転換者の中でも、特に彼の体は例外的なようでもあり、昼間、がりがり、じゃきじゃきと音させながら皮もむかず瓜畑を渡り歩く彼の姿が意図せず目撃されると、農作業者は顔を背けながら、またあの災厄が来た……、とあきらめを含みつつ嘆息せざるを得ないのである。

「ニガイ……」、と呟きながら畑から畑を食い荒らし続けるヴァルター・ホクサの角ばった姿は、特にザラマンドの農家にとっては自然災害に近い。性交ごとに体色が変じられるのは分かるとして、何故、手足や腰回りの形まで硬質に整えられているのか。全体としては三角錐に近いのだが、しばらく見守っていると手足が正多面体のように変形し続ける彼の体の形状について、理解できる者は誰もいない。

尚、スレッドのバルシアンに本部を置く「アンサイト・エクスプラネット」社が、ある時ペリファレル・ディレイターに行った構成員へのインタビューによると、彼のソリッドな各部位の形状は、ヴァルターがグランドセルブスの色相の転換者専用の監獄の監視者だったとき、規律違反を繰り返す反抗者に対し行った「折檻」の結果なのだという。その行為と結果がどのように結びつくのかについても、上記、実際にパルスプラントの畑の只中で彼の姿形の変更を見つけた民衆たちの感慨と同様、一般には全く以て理解できない、というのが正直な所だろう。

とは言え、イスマエリ・アマトらと並んで、ヴァルター・ホクサが末梢の抹消財団の創設メンバーであることを前程すると、ひとまず異常な戦闘能力を持っていることだけは間違いがない。だから、彼の体の色合いを面白がって近づいていこうとする子供がいればすぐにでも引き止めるべきだし、畑を荒らされようとも性の悪い害獣が現れたくらいに請け負っておくほうが賢明なのである。

最後に、そうして空想上のモンスターや自然現象のように扱われるヴァルター・ホクサの、実際の危険性を示す逸話を紹介して、この記事の結びとしたい。この話は、リウネに住む村人の報告として、アンサイト社の冊子に掲載されたもののうちの一つである。

ある日、一人の農夫が、がりがり、じゃきじゃきと水分を滴らせながら畑を歩く色が錯乱したような立体の塊を見つけた。そうして変形しながら歩くヴァルター・ホクサだったが、この日はあいにく、パルスプラントの国境線沿いを越えてしまい、ン・テラの遊牧民の圏域にまでそのまま散歩してしまった。

フローリアン・ホフマンによる平定以後も、フロウタールの南部に残っていた部族のうちの一つが、偶然にもヴァルターの姿を見かける。単独で草原を彷徨く「転換者狩り」をしようと、十数名の遊牧民は馬に乗って色の塊に近づいていく。その時に事件は起こった。

ちょうど、遠方から事態を見守っていた(この件の報告者である)農夫が自身の安全を確認しようと身を捩った一瞬の隙きに、にわかに雷雲があたりを覆う。雲の影が唐突な「夜」を形作ると、嵐が急に巻き起こったように、耳元を雨の音が塞ぎ、土砂降りになる。

たまらず農夫がそこから逃げ出そうとして注視していた遠方から目を背けると、雨は止み、雲から極端な光柱が注ぐ。再度振り返ると、既にそこにさっきまで馬を駆っていた遊牧民の姿はなかった。

がりがり、じゃきじゃき、と、今にも口元から滴る唾液の音が聞こえそうなほどの勢いで、ヴァルターは畑の只中に立っている。ヴァルターだけが立っている。付近には、無残にも打ち殺されたらしき十数名の遊牧民の死骸と、息をしたままのたうち回る複数の馬体がある。……数秒が経ち、そこで起こったこと、をなんとなく理解してようやく、若い農夫は親から言い含められていた「色の付いた三角錐」に近づいてはいけない、という忠告が正しかったことを知るのだった。

「彼は、おそらく、何らかの目的で、殺人のために作り上げられた機械のようなものなんだろう」。

一日の行動の優先順位

1 ウリを齧る

2 「ニガイ……」、と呟く

3 次の畑へ移動する

4 立ち止まって、体を変形させる

5 鎌を使い、野菜を収穫する

6 天気雨に身を晒す

SPECIAL
8398826
闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
141
空間時間
06
保持スキル収穫惨殺変形鎌技

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