死後もドメイン有効期限永続を願った素人著述家「フーバート・ウェント」

Mimesis of Frautal

VR1060年~1125年(故人) 男性

フーバート・ウェントは、スレッドのシャルマーフ地方、ブレスト出身の男性である。自称、著述家、だったらしいが、生前に彼の著作が評価されたことなどは一切ない。

元々、彼は、ア・ハに所在する静謐派の修道士の一人として、記憶=投射能力の習得に励んでいたらしい。が、40歳を過ぎても能力を獲得することができず、年齢規定を理由に修道院を離れてしまっている。その後、故郷のあるブレストで港の倉庫番として働きながら、生涯の終わりまで細々と著述を続けていたのが彼の人生だったようだ、と彼の親族は話す。

ただ、彼の死後、彼の名が一部の人間の間に広く知られるようになったのは、何も著述そのものが再評価されたからでは決してなく、彼自信が彼の唯一の友人に遺言した一風変わった試みによっている。その試みとは、生前全く評価されなかった彼自身の著作の一覧を、もし興味を持ってくれた者がいればその人物に確かに読んでもらえる可能性、への願いであり、その為の著作保護義務の代替としての、ささやかな遺産の預託であった。

とは言え、ここで誤解してほしくないのは、そうして託された彼の著作の全てが、どこかの図書館の書庫に保持されているとか、当の友人の自宅に丁重に保管されているわけでは「無い」点についてである(勿論、フーバート当人以外にそうした措置を施す価値の一切見い出せない対象物であろうが)。フーバートが望んだのは、そうした「静的な」保持ではなく、むしろ極めて動的な、常に人目に触れる可能性を一定程度保持したままの、絶えざる移動を伴った「不確定な」保管態勢だったのだ。

そこで、彼が生前に発案した方法とは、十年に一度、著作の保管されるべき金庫の変更を指示しながら(その行き先は、多くの場合、彼の生前の数少ない友人たちの親族の邸宅であるようだ)、そう言えばこんな奴が書いていた書物があったな、といった感じで、自身の著作への周りの友人や知人(彼を知りうる可能性のあるすべての者)からの印象が、定期的にアップデートされ、リフレッシュされるはずの、「引っ越し」を強要する、という何とも迷惑極まりないものだったのである。一定額の金銭との引き換えとは言え、これを十年ごとに要求される知人の苦労は、(忘れかけた時にやってくる税金の支払いのようなもので)容易に想像される。

ただ、この、フーバート自身が自身の価値を過大評価した果てに採った最期の行動は、彼の意図したのとは全く別の仕方で、彼の著作の評判を広めるのには役立った、とも言えると思う。

誰も、彼が書いた内容には全く興味を持たなかったのには違いないが、十年に一度ずつ、邸宅から邸宅へと運び込まれる文書の存在は、シャルマーフ周辺の住民にとっての格好の噂の種となり、その運搬が滞りなく行われるかどうかを見守ることは、一部の好事家にとっての定期的な観察を伴う小さな祭りのようになったからである。尤も、当のフーバートからしてみれば、彼の著作自体の内容についてのみ、もっと共感したり、場合によっては感動してみたりする読者こそが、一人でも多く現れてほしかったのだろうが……。

その「実際の」著作が、小説なのか、批評なのか、はたまた他愛のない日記の類なのか、今や興味を持つ者など一人も存在しない。だが、彼の著作の運搬に関しては、定期的な暇つぶしの種として人々の巷間に上る、というのが、現在のスレッドの住民にとってのフーバートの著作への基本的なインプレッションなのである。

(生前の)一日の行動の優先順位

1 著作に思いを巡らす

2 倉庫での運搬作業に精を出す

3 朝日とともに帰宅する

4 風呂場で軽く唄を歌ってみる

5 二日に一度自分を慰める

6 死後の著作権保護に頭を悩ます

SPECIAL
3756768
闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
1122
空間時間
33
保持スキル著述労働

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