「レディエーション・レディオ」のメインDJ「パッキー・イアフレート」

Mimesis of Frautal

VR1095年生まれ 男性

パッキー・イアフレートは、ディレリアとイスの国境沿い、イヴェニス平原出身の男性である。8歳の頃、両親とともに訪れていたパルス・プラントにて他の住民ともども拘束され、以後39年もの間を軟禁状態で過ごす。

ここで唐突に、パッキーの半生を語る順序、は逆さまにする方が望ましい、と冒頭で宣言しておく。というのも、これは彼がメインDJを務める「レディエーション・レディオ」の中で彼自身述べていることなのだが、パッキー・イアフレートとは、常に「今を生きる男」だからである。後悔や停滞と云った言葉は彼の辞書に存在しない。あるのは、目の前に打ち広げられた自由を謳歌するための旅路のみ、といったタイプの人間がまさに彼なのである。

だから、幼少の頃から40近くもの期間を過ごしたスルーゲイズ南のライムインでの暮らしぶりなどは、最小限に述べるのに留めておく。別項でも述べた通り、この地域はパルスプラントの地名の由来となった奇音が近年になって再発生した土地であり、住民は皆短命であることが知られているが(パッキー自身も両親を比較的早く亡くしている)、奇音の調査のため、当然彼もそこの土地を離れずに暮らすことを余儀なくされた。

ただ、パッキーがフロウタールでも知らぬ者のないほど著名な人間になるのは、VR1150年現在に近い、ライムインを脱出してからの数年間のことである。

ただ、こう書くと話が飛躍しすぎていて訳がわからないので、やはり一度時系列を遡る。すると、結局の所彼は、スルーゲイズからの数十人単位での脱走の首謀者であった、ということになる。ヌーメナル実験場での民衆の取り扱いについてはこれもまた別項を参照頂くとして、重要なのは、それらの実地に住んでいたパッキーを始めとした民衆が、ミリアム・ブライスという女史の書いた記事を間接的に読んだときの反応である。

にわかには信じがたい話なのだが、彼らはミリアムによって書かれた新聞投稿を読むまで、自分たちが軟禁を前提とした管理状況に置かれていることにすら気付いていなかったという。ヌーメナル実験場での度重なる試験はむしろ、原因不明の疾病を治すための措置の一部として捉えられていた。一方で、パルスプラントの局所的な閉鎖は、そうして疾病に侵された自分たちを積極的に支援するためのものである、と、彼らは言い含められるままに信じ込んでいたようなのだ。

必然的に、ミリアムの記事に対する反応も別れた。そもそもそこに記載されているようなことが事実なら、この新聞自体が端から検閲の対象になっている、と当然の疑問を投げかける者も多く、全体として、ライムインでの割と裕福な保護を与えられた暮らしぶりに満足する者たちは、試験場の離反者の一人の勝手に吹聴している噂、程度にしか取り合わなかった。

他方で、パッキーを始めとしたごく少数の者たちは、ヌーメナル実験場での所為と内容の符合する記事を冷静に読み、その報道が事実だとすれば自分たちの置かれている状況にはっきりと異を唱えるべきだ、として、幾度か話し合った末にスルーゲイズからの脱走を試みる。

後のパッキー自身の回想に従うと、脱走自体は驚くほど他愛もなく成功したようである。ライムインと実験場の管理者の側は、「本当に」そこから逃げ去っていく人々を拘束しようとするとミリアムによる新聞記事を追認するような形になってしまうし、無碍に追跡できなかったのではないか、とパッキーは客観的に分析している。ただ、問題はその先である。

トウモロコシを荷台いっぱいに積み上げてスルーゲイズを出てきたのはいいが、一体どこへ向かえばいいのか。チェシンとの国境沿いの塹壕を迂回し、ファドルベルクからアルラーフに辿り着く。そこまでを経過し、いつの間にか脱走した民衆の指導者のようになっていたパッキーは、さらに国境を超え、スレッドのア・ハへ向かうことを思い立つ。

これは何もパッキーが独断で決めたことではなく、アルラーフに立ち寄った時、皆でショーン・インキュナブラと彼の友人の撮影したヴィジョンを見たことが大きく影響して自然と決められたことなのだという。ぷちぷちと、体の中で弾けるようなグリッチ音と、ヴィジョンの融合。それらの像の投影を目の当たりにした時、自分たちの特異な体の奇音を活かせるのは、記憶=投射能力を研究しているというア・ハの修道士の連中しかいない、その場にいる全員が必然的にそう思った。

幸いなことに、数十人単位の群れとなっていた脱走者の集団は、揃ってスレッド中央の坊主たちに思惑通り受け入れられるに至る。体の中でぱちぱちと音が共鳴し、互いの位置関係を同定できることを、何らかの形で軍事利用できるとおそらくは考えたのかも知れない、とパッキーは後にこれも自身の放送するラジオの中で語っているが、そこに疑念や怨恨はない。

むしろ、ア・ハの修道士の連中は、これ以上無いほどにライムインの民衆の奇音に興味を持ち、どうすればそれを体得できるのか、共同で研究するような調子で、脱走者となった若者たちを歓迎し、自分たちと同等かそれ以上の待遇で住環境を与えてくれた、とパッキーは回想する。彼はそれに続けて、今でも自ら汚染されたトウモロコシを齧り付け、奇音の発生を確認する坊主の後ろ姿が思い浮かぶようだ、と笑いながら語ったりもしている。

話が延々と逸れかけた所で、ここへ来て漸く、冒頭のパッキー・イアフレートの現在地、に戻ることになる。離散、を運命づけられたパルスプラントの民族の一人として、彼も他の民草と同様にア・ハの地に安住することもできたのだろうが、彼は、自らの求めた自由への渇望のみを最大限活用しようと試みる。つまり、離散に次ぐ離散を、新たに辿り着くべき現在地のみを信号として送り続けようと考えたのである。

現在も、パッキー・イアフレートはフロウタールのどこか、を歩き続けている。そして、その旅路には、パルスプラント出身者の彼にしかできないある仕掛けがある。それこそが、冒頭から述べている「レディエーション・レディオ」という公開された放送局なのである。ここまで読んで頂ければお分かりのように、この放送局を聴取するには、チャンネルを合わせようと試みるリスナー自らが、「奇音」の受信者として波長を受け入れる他ない。

逆に言えば、ア・ハで栽培され直しているという汚染されたトウモロコシを一定量かじれば、誰でも彼の放送を聞くことができるわけだ。とは言え、ミリアム・ブライスという女史が書いた記事の中の「奇音の発信者同士の交信の可能性」を裏付けてしまう「レディエーション・レディオ」の存在は、パルス・プラント当局から疎まれ、行方を追跡される羽目に陥っているようでもある。が、そんなことはお構いなしに、パッキー・イアフレートは旅を続ける。

牢獄にぶち込まれたのならまた牢獄の内側をリアルにレポートすればいいし、またそこを脱出できたのなら新たな旅をさらに継続する。発信する信号を受信してくれる仲間がいる限り俺は人生を続行するし、もしそれを途絶えさせようとする奴らがいれば死にたいように死ぬ。

「とにかく、俺は自分の人生の残り一秒まで自由を謳歌し続けるんだ」、というのが、リスナーがレディエーション・レディオを聴取するときに頻繁に聞く、パッキーの決まり文句なのである。ちなみに、今現在、彼のラジオのリスナーはフロウタール圏内に3000人ほどいるらしい(もし新たに彼の放送を聞いてみたいという方がいれば、ア・ハの菜園にあるトウモロコシを食べてみて下さい)。

一日の行動の優先順位

1 日のぬくもりを感じる

2 レブノ島ロックフェステイバルのヴィジョンを思い出す

3 好きなパンクロッカーのランキングを作る

4 リスナーに現況を報告する

5 周囲を警戒する

6 新たなフェス開催を夢見る

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