ローファンタジー的世界観の分析:Mount & Blade 2 公式日本語化ブログを読む

CRPG関連

「やらずに死ねるか!」という文句の既に至高の対象であるMount&Blade2:Bannelord。今回は前項に引き続き、その世界観を解説していきたいと思います。

システム回りに関する前記事でも書きましたが、今回の記事自体の内容は、すべてSTEAM製品ページ内の、Taleworldsブログ記事からのまた引きになります。特に、各国の詳細な設定については、本記事を読むよりもそちらを参照した方が早いと思うので、記事内のブログへのリンクを場合によってはたどって見て下さい。(この記事内のすべての画像はその記事内からの引用であり、画像の著作権もTaleworldsに属しております)。

1 各種勢力・国家像

で、結論から申しますと、今回のBannelordは、大きく分けて6つほどのエリア、勢力からなっているようです。

フーザイト、バタニア、スタルジア、ウランジア、アセライ、帝国(帝国はさらにその中で三大勢力に分かれる、らしい)という名称、区分がそれであり、一応ざっくりと説明しますと、

フーザイトはモンゴルに代表される中央アジアの遊牧民が基礎的なアイデアの源となっており、

バタニアはケルト民族の文化の中でも、前記の要素と後期の要素が混在し、

スタルジアはロシアやベラルーシ、ウクライナに存していたキエフ公国がモデルになっており、

ウランジアはフランス北部からイギリスやシチリアに勢力を広げたノルマン人、

アセライは7世紀のイスラム台頭より少し前のアラブ人、

帝国はギリシャやローマの古代国家、及び東ローマ帝国をモデルにしているようです。

その詳細については、上記、各勢力の名称のところに外部リンクとして該当する公式のブログ翻訳内容のSteamページへのリンクを貼り付けておきましたので、ここでは繰り返しません。というか、めちゃくちゃ、細かすぎるほどそこにはディテールを積み上げるための考証と考察が書き連ねられているので、これから正式なBannerlordの発売が決定されるまでの間に、幾ばく化でもカルラディアの世界観に触れておきたい方は、まずそちらを読み込むことをおすすめ致します。

2 折衷的感覚・Bannerlordの独自性

そっち側に詳細が書いてあるのなら、じゃあなんでこんな記事書いてるかと言うと、このBannelordの各勢力、世界観設定の中に、まさにTaleworldsの提示しようとするゲーム設定の独自性、トルコに拠点を置く開発チームの発想のオリジナリティがあり、その点について上記飛び先の記事内の各項目を参照しながら論じられる可能性があると考えたからです。

その本質というのも既に題目として示している通り、「折衷的」ということですね。

フーザイトにしろ中国やペルシヤとの文化の混交をこそ反映したいと公式のブログにも書かれているし、

また、バタニアにしても暗黒時代のケルト族の作る円形家屋や集中的要塞と、カエサル存命の時代のオッピドゥムと呼ばれる町や交易路を形成していた時代の双方の要素を混ざり合わせ、

スタルジアも、フィンランドの木こりやトルコ、イランの草原に暮らしていた部族やギリシアの宣教師の影響を、

他方、ウランジアの武具自体も9~12世紀の西欧で見られたものをベースにしていると言うだけあって幅広いものになっているようですし、

さらにはアセライに関しても、イスラムの圏域の文化的な反映のみならず、カリフやスルタンの頭を悩ませたベドウィン族の存在までもが小勢力として内包されていることは、どれもすべて公式のブログの方で述べられている通りのようです。

勿論、それらの要素を周縁に配し、さらなるカルラディアの歴史にとってのオリジナリティを加えて基盤となる国家的形態を与えたものこそが「帝国」ということにもなるのでしょうが、いずれにしても重要なのは、このMount&Blade2 Bannerlord の持つ世界観が、そうした「帝国」自体の統治形態よりも、むしろその「周辺」に配置された外部からの干渉によって、常に流動性を保っているように見える所だとも言えるのでしょう。

3 ローファンタジーとオープンソース

この辺りのことは、それこそ柄谷行人氏の「帝国の構造」などで述べられている構造論も視野に入れながら話を進めるべきだとすら思われもしますが、そうして論旨を飛躍させる前に、やはりゲーム開発会社としてのTaleworldsが保持する強いポリシーとして、また自ら表明する「ローファンタジー」という要素を始めに考察する方が自然な流れです。

と言いましても、本当に、世界観の細部については、もう既に完成品として発売できるのではないかと思われるほど、微に入り細に入り上記のリンクで掲載されていますから、そちらを参照いただくのが何より早いことは既に述べたとおりであります。一方で、それらを参照させる際のTaleworlds自体の身振りの中に、考証に関する圧倒的な自信と、であるがゆえに「手の内」を包み隠さず晒そうとする(さらには、そこを基盤としてどんどん新しい世界をMODで作って下さい、とか、認識不足な所があればご指摘下さい、というような)すべてを開示していくオープンソース感すらも、世界観構築とその解説の中には如実に感じ取れる所でもありましょう。

その点が翻ってあえて制約としている部分が、「ローファンタジー」感覚ということになりますね。いや、一般的なRPGはついつい「ハイファンタジー」感覚を求めてしまうところは周知のとおりですが。魔法とか、その時代に存在しない科学とかね。

ただ、Taleworlds は敢えてその逆張りを行っている。この点は、公式のブログ内でも言及されている通り、中世のサンドボックスを基盤とした、ランダム性を排した物理演算によって展開されるMount&Blade、カルラディアの世界観には、「ハイファンタジー」的な要素がそぐわない、という至極当然の理由によっています。

ですが、そういった制約を、むしろゲーム制作上の長所とし、自分たちがどのような時代設定を、どのような資料に基づき、どのように構築したかまで完全に公開している実例は、あまり無いのはないでしょうか。いや、言い訳できなくなってしまいますからね、本当に、絶対的な自信と費やされた労力と時間に対する自負がなければできないことだと思います。

つまり、「ローファンタジー」感覚と、世界観に対する「オープンソース」感覚が、物理演算という主題のもとに、分かちがたく結びついているわけですね。これは後に、MOD導入の別記事の中でも述べますが、はじめからユーザーフレンドリー、MOD前提のゲーム制作過程も含め、ある種のリアリズム、ゲームを作る上、楽しむ上での「制約」をテーマとして、これほどまでに作り手側とプレイヤーが密接に結びついたゲームも珍しいと思います。

普通は逆で、突飛な思いつきや、ありえない組み合わせこそが追加要素として歓迎されるとも思う所ですが(勿論それらの要素もMOD的展開としては否定されていない)できるだけリアルであろうとする努力、その中でオリジナリティを損ねずに新たに追加される可能性に対して開かれたフィールドが、私たちのまだ見ぬカルラディア、ということになるんでしょう。

4 まとめ

というわけで、最後は例のごとく筆者の妄想のようになってしまいましたが、まあまだ発売されない段階でのリアルすぎる世界のキャプチャ画像を見ながら、自らの立ち回りやプレイスタイルを思い描くのもまた一興というものでしょう。

特に、そのプレイの中でも顕著に感じ取れるはずの要素として、最後に上記のことにつなげてひとつだけ付言すると、やはりTaleworldsという開発会社がトルコのメーカーだという点、この点は、中央アジアの「帝国」から、西欧の中心的な文化圏を見つめ直す最適な機会をプレイヤーに与える所以となっているのではないでしょうか。

そこにある動乱の感じ、上にも述べた文化的な混淆、「折衷的な」要素、この辺りのことが、集落を基盤としたMAPを常に「移動すること」、その勢力間の関係性の流動性の中で息づいている気がします。近年の大手メーカーの作品群などを見ていると、こうした常に流動的で息つく暇もないプレイ体験を与えてくれるゲームというのは、割と少なくなってきているのかもしれません。(私はこの点について、特に鬼畜王ランスとランス10の比較の中で既に論じました)

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って、かなり話が逸れかけましたが、Bannerlordの世界観について、現時点で述べられることは以上です。というか、やっぱり弓騎兵は今回も凶悪そうですね(汗)。ただ、その辺のバランスは最も工夫されているようでもあり、何にしてもユーザーの数だけ複雑化可能な、体験しがいのあるフィールドが広がっていることには間違いがないんでしょう。

5 おまけ

あと、本当に最後にもう一つ、言い忘れていたので付言しておくと、これはSteve NegusとのQ&Aの中で述べられていることなのですが、カルラディアには5つの徳、即ち、友人や親類との忠義、自身の言葉に沿った行動、大義のために犠牲を払う勇気と意思、苦しむ者に対する寛容さ、そして長期的な実利的計算、があり、これらを掲げながらプレイを深化させていく、ということです。

そして、これらの要素を中心としたNPCとのやり取りをよりダイナミックに表現するために、あえて固有の、既存のRPG的な「クエスト」的なものも制限している、とも指摘されています。

要は、NPCとのやり取り、クエストそのものもサンドボックス的、ということになるんでしょうね。世界観、の項目とは直接関わりがないようにも見えるこの指針について、最後に一つ付言しておきたかったのです。つまり、予め与えられたいくつかの勢力、イメージの中で立ち回り、それらの「実際の」フィールドの中で起きたことを是認するのも(否定するのも)、結局はプレイヤー次第である、と。

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