「ニヒャ史観」という奇説を主張し続ける歴史家「ニヒャ・ロスコ」

Mimesis of Frautal

VR1094年生まれ 男性

ニヒャ・ロスコは、スレッドのベルゼン出身の男性である。フロウタール各地の史跡を探訪して回った自身の経験から、幾つかの歴史に関する独自説を提唱しているが、資料の読み込みの粗さを指摘され、学術的な観点からは全く評価されていない。

ニヒャ自身は現在、ディレリアのユルト南にある温泉街に居を構えているのだが、彼はかつて、スレッドのダムステアに本拠を置くアンサイト・エクスプラネット社の主筆編集人だった。

10代から20代の頃、パルスプラント以南のン・テラの遊牧民の居住地や、イス帝国西の「戦場の霧」を抜けた遥か西側、ディレリア北のパルカンテ諸島まで、世界各地を飛び回って独自の取材活動を行っていた彼は、それらの諸地域の民族や風土を取り上げた紀行文で、瞬く間にフロウタール圏内のベストセラー作家、と呼ばれるまでになった。

ニヒャの文章の特徴は、とにかくセンセーショナルな、一般的なフロウタール市民には知り得ない情報ばかりか、広く知れ渡った歴史上の伝承でさえも、疑いの差し挟める余地のあるものや真偽の不確かなものには徹底して「自分の知りえた」情報を基に、新説をでっち上げ、再考察を促す、というものだった。

必然的に、それらの新たな資料の読み込みと論説の構成は、査読と深い批判にさらされたものではないから、多くの学術的な研究者からは論理の飛躍や読み込みの浅さを指摘されるのに留まっている。ただ一方で、そうした実際の研究者からの批判は、ニヒャの論説の「確証の甘さ」を突くばかりで、断定的に、ニヒャの論じようとする諸事象に明確な(読者の求めたがる単純明快な)答えを代わりに与えるものでもない。ここに、ニヒャの側がさらに反論を加えようとする間隙が生まれる。

「ソーシア・ノウ=ン・テラの遊牧民説」「アンソニー・マラット女性説」「セバスチャン・リガルスキ生存説」など、彼が大衆の耳目を惹こうとして提唱する異説は数多いが、結局の所、それらの奇説・新説の確からしさは、「検証不可能性」によってのみ支えられている、と言える。

過去の歴史に対する普遍的な理解が、反証可能性によって決定づけられ、且つ、その反証が未だ行き着いていない領域をひとまず「真実」とする限り、裏を返せば、一見して全く根拠のないような異説でさえも、確定的な反証が為されない限りは、とりあえず一定の確からしさを保持している可能性を主張できる(全てのオカルトとはこのようなものだろう)、というわけだ。

上記のように詳述すると、何かニヒャ・ロスコの主張が全て出鱈目のように聞こえてしまうかも知れないが、アンサイト・エクスプラネット社でVR1136年から1142年くらいまで連載された彼の記事を見ると、そこには、冒頭でも述べたとおり、彼がそれまでフロウタールの人民が分け入って行かなかった異境への探索の記録と同時に、多彩な実体験のルポルタージュを収録していることが確認できると思う。おそらく読者は、むしろそれらの探索から割り出されるニヒャ自身の新たな推論より、あくまで紀行文としての、冒険譚としてのニヒャの連載に心を惹かれていたのだとも考えられる。

ミラジ教徒との圏域付近の「戦場の霧」に佇む巨人の噂や、時の波動の海の無限ループ説など、まさに東奔西走してニヒャがかき集めた情報の数々は、彼自身の実体験という唯一の検証を元に承認されるか、単純な奇人の呟きとして黙殺される、というのが、今の所ニヒャ・ロスコが論じた諸事象への一般的なフロウタール人民の反応なのである。

もちろん現在では、ミラジ教徒自体がイス帝国を半ば制圧しているように、特に西方の側の世界との交流が活発化していることもあり、過去にニヒャが持ち帰ったとされる文書や遺物の類の信憑性は再検証された上で、大きく損なわれてもいる。

ただ、特にそうした言語の解析などに基づく反論が提出される度に当のニヒャ自身は、また別の読解の仕方を提出したり、一部の限られた状況において実体験した事態が再現される、などの注を新たにつけ直し、要は堂々巡りの特権を利用してさらに自説の強化と再構築に勤しむ、という「再反論」を行っているのである。

こうした、「真偽の検証不可能な領域に対する自由な解釈や理解」は、一連のニヒャの言動を揶揄し、「ニヒャ史観」とフロウタールでは呼ばれている。裏を返せば、VR1130年代から1140年初頭まで続いた彼の紀行文とレポートの数々が、それだけ広範な読者を形成していた証左でもあろう。

ところで、VR1150年現在の彼はと言うと、長年、本を出版していたアンサイト・エクスプラネット社との関係もこじれてしまったようで、今はユルトにある温泉街に隠遁しているという。そして、ごくたまに彼の本のファンであるという読者が彼の下を来訪すると、街から少し離れた自宅の山小屋に来客を招き入れ、気前よく過去に自身の体験した奇談や各地を回って集めた歴史的遺物のコレクションを披露してくれるらしい。

さらに続けて、

「全く、ここら辺は若いもんが遊びに来るような場所でもないんだろうにな」

などと、ユルト付近のリゾート化を嘆くことも多い所から、自身の住まいの周りの熱泉を愛好している様子も同時に伺える。……つまり、「隠居中」であるということだ。

一日の行動の優先順位

1 温泉に浸かる

2 「フロウタール秘密史」の執筆に精を出す

3 旅行の計画を練る

4 過去の著作を整理する

5 月の半分ほど家を不在にする

6 来客をもてなす

SPECIAL
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闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
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