PC Building Simulator 日本語化キャリアモードを攻略=自作PCパーツ・ケース選びに最適な教材

CRPG関連

わたしのPC Shopを引き継いでくれてありがとう.そしてあまり良い状態で引き渡せなくて申し訳ない。

ある意味で究極の作業ゲー、自作PCマニアにはよだれのダラダラと流れ続けるシミュレータ、今回は既にの日本語化も完備したPC Building Simulatorの細部を、画像を交えながら解説していきたいと思います。(以下は全て現時点で早期アクセス扱いのベータ版 V.0.8.0に関して論述したものです)

まず、上図を見て頂きたいのですが、様々な依頼を元に送られてくる、他人のPCを眺めるだけでも非常に楽しいものです。

いや、いきなり全パーツ使えるフリービルドモードもあるにはあるんですが、このゲームの本分はそうして依頼をこなしながら徐々に出来ることを増やしていく、まさに世界中のジサカーが辿った道筋そのものの「キャリアモード」の方でしょう。

で、やり始めて初っ端詰まった人の方のために一応言っておくと、これ、PCを直した後に「対面で返却する」必要があるんですが、具体的にどうするかと言うと、直したPCをケース類の蓋閉めた状態で、

の位置に置き直すことです。まあググれば一瞬でわかりそうなことですが、念の為。

ゲーム自体は、さらに上記の画像でもお分かりのように、自分のPCをチェックしてSHOPだとかメールだとかチェックしながら、(当日配達とか翌日配達に別々に配送料がかかるのとか細かいね)次々と送られてくる顧客の我儘な注文に答えていく仕組みです。

まあ、その過程で送られてくる個人のPCのヴァリエーションが、とにかく面白い(笑)。上の画はホコリのつまり過ぎでパソコンおかしくなった顧客のものですが、ちょっと引くレベルですね。

いや、何の為のサイドパネルなんだと、とにかく定期的にメンテナンスして下さいよ、と言った感じです。そんなパソコンををエアダスターで吹き飛ばしていくと、(マウス長押しするだけですが)数分後にはこんなにきれいになりました。

っていう感じで、本当にひたすら自分の作業部屋で業務をこなし続ける、まさに「作業ゲー」の本作ですが、その過程で上位パーツが少しずつアンロックされていくのは、

やはり面白いですね。

ただ、ここで一つ解説しておくと、難易度設定とか特に無いゲームバランス自体は、結構マゾいです。そんな所まで実際のジサカーを模倣しないでくださいよ、と言いたくなるほど、毎日がカツカツです。まあ、そこを工夫すんのが楽しいんでしょうけどね。

というか、本音を言うとこれ、もうちょっと家計のやりくりを緩くして、何か家具を取り揃えられたりとか、休日に映画を見に行ったりとか出来ても良いんじゃないかと思いますね。後はガールフレンドと知り合えたりとか(笑)。

若干そういうリアルライフのシミュレータ的要素も入れた方が、(それは最早RPGなのかも知れませんが)ゲームとしての面白さは増すでしょう。

一方で、じゃあこのゲーム自体が一部の世界中に存在する自作PCユーザーにのみ向けられたものなのかと言うと、まあ間違いなくそうと言えばそうですけど、ここまで全く自作PCに興味を持ってこなかった方でも、楽しめる作りにはなっています。

その楽しみ方の一つは、たとえば上のゲーム内デスクトップ内の壁紙を見て頂きたいのですが、当然PCを立ち上げたときのそれぞれの顧客の背景画像は各々違うわけで、お、こいつ意外といいセンスしてんな、とか、思いがけず気付いてしまったときに訪れる「シミュレータ的要素」ということになるのでしょう。

この点はやはり非常に優れている。

上の画ではメモリクリップの開け締めに対する指示が強調されていますが、電源ケーブルのそれぞれのパーツへの脱着など、要は自作PCにとって面倒くさい要素、気を遣う必要のあるディティールが、きちんと「面倒くさく」作られている。

ただその「面倒臭さ」は単なる一方的に不親切な要素、にはなっておらず、全く自作PCに興味のない方でも理解可能なように、ゲーム内の操作として迷うことなく行えるようになってもいる。

この辺り、全く簡略化されてしまっても駄目だし、一方で極端に複雑化、専門化されても駄目なバランス取りだと思うので、その点については非常に良く出来ていると思います。

で、上に出述べました「ゲームの面倒臭さ」っていうのは、レベルごとにアンロックされていく「ツール類」によっても、多少軽減される仕組みになっているんですね。

まあこの辺の資金繰りのバランスに関しては前述しましたように言いたい所はあるんですが、基本的な進行として、徐々に出来ることが増えていくのは嬉しい点でもあります。

さらに説明しますと、そのゲーム進行の過程で何度もお世話になるのが、上図のデスクトップ内の「3d Mark」ですね。

お分かりの通り、他人のPCがきちんとグラフィック要件を満たして起動できるか、チェックするときに使うんですが、よく考えたらこれ、ちょっと考えられないほどシュールな状況ですよね。

ゲーム内で、他人のPCを組み、
そのデスクトップ内でベンチマーク動かしている、というね。
あと、今後どうなるかは分かりませんが、現時点ではゲーム内でPCにかかってくるベンチの負荷は「実際の」PCには掛かってこないので、ご安心を(笑)。

(いや、これもし掛かってくるとなると、PC Building Simulator を動かす動作要件は満たしているけれども、PC Building Simulator 内で他人のPC内のベンチを動かすと自分の実際のPCがフリーズする、とかいうわけのわからない状況になりかねませんからね。まあ、そんなことはないのです。念の為)

…………………………
というより、上に書いたような冗談はさておき、実際のゲームを既にプレイ済みの方にはお分かりのように、3DMark の繰り返しを強いられる仕様には、少し辟易させられますね。

あなた方一体どんだけ3DMark にスポンサードされているんだ、というね。勿論、ゲームプレイに一定のインターバルを与える効果はあるとは思うんですが、であるとするならもうちょっとヴァリエーション増やしてくれよ、と思います。

同じ設定のベンチを何度も何度も回したくない。まあこの辺はさらなる改善が期待される所ではあるでしょう。
…………………………

さて、ここまででざっくりとゲームの仕様を概観した所で、じゃあこのゲームが「ゲームとして」面白い、本質的な部分はどこなんだ、という点に再度戻ってみたいと思います。

上では若干ネガティブなことを書きましたが、私自身がこのゲームの最大の魅力だと思う所は、「細部の作り込みが洒落ている」点です。

上の、メールソフトの起動された画面を見て頂きたいのですが、斉藤@斉藤卸売店って、どこなんだよ、とかね。

確か似たような名前の歌人の方がいらっしゃったような気がしますが、それはさておき、

本当に送られてくるメールの数々が、やけにリアルと言うか、一つ一つコミカルで、いちいちプスっ、と笑ってしまうんですよね。

テクストの一つ一つというか、ゲームの細部の一つ一つに作り手のセンスを感じるゲームというのは、(ElonaやStardew Valley とか)数多くあると思いますが、そういう愛を持った手触りで精密機械の内部が構成されていることを、我々プレイヤーはゲーム内において肌で感じられます。

そして、不意に設定された壁紙にハッ、とする。
PC Building Simulator とはそんなゲームです。

で、ここからはこのゲームのもう少し掘り下げた分析になるのですが、

上の画像でもお分かりのように、このゲームのもう一つの特徴として、「実際のパーツメーカーからの協賛を受けている」という点が挙げられると思います。この点は非常に巧妙ですね。

というか、このゲームの作業的な内容にのめり込んでいくに連れ、ひょっとして、これ、今までのマーケティングの仕組みとか抜本的に替えうるんじゃねえか!?と嘯いてみたくなるほどの、よくできた構造を持っていることが理解されてきます。

多少なりとも自作PCに興味がある、もしくは実際に自作をされる方なら、ゲームをプレイする過程で否応にも各顧客が使っているパーツは目に入ってきますからね、そこには明確な広告効果がある。

勿論、ゲーム内で広告的効果を狙って看板を掲げる、という仕組みは過去に多かれ少なかれいくらでもあったでしょうが、ここまで徹頭徹尾広告で貫かれているゲームも珍しい(笑)。

で、その広告がユーザーにとって全く嫌味にならないどころか、むしろ積極的に受容したい情報として、完全にピンポイントの訴求性の高い場所に、ゲームプレイそのものの素材として配置されているわけです。

上はSailAway とかいう航海シミュレータを起動したい顧客のデスクトップの航海画像というこれまたシュールな画ですが、PCパーツのみならず、ウイルススキャナやベンチも含めて全てのPC内アプリケーションからのスポンサードを受けることも可能といえば可能なわけで、マジで、無限大のマーケティング可能性を持つオープンワールドがそこには広がっている、と言えるのではないでしょうか。

↓ 実際に既にAdobe,と言った名前もある

PC内アプリで、PCそのものとそのPCで可動させられるPC内アプリをさらに模倣する、という自己言及的、としか言いようのないこの構造は、(そういった意味ではFractal Designも早く使ってみたい、なんてね)全ての天才的、と呼ばれる発想がそうであるように、まさに誰もが思いつきそうで思いつかなかった、類のものでしょう。

というか、今後の売上と展開次第では、究極的には半ばフリー化されているようなゲームとかアプリを、実際にPC Building Simulator の中で動かす、なんてことも全く不可能ではないはずです。

って、ちょっとそれは先走り過ぎかも知れませんが、少なくともPCパーツ業界にとっては元手ゼロでゲームプレイヤーに一方的に広告効果を与えられるわけですから、毎年発売され、更新されていくPCパーツごとに、それこそPC Building Simulator の側もアップデートなり、もしくは某Football manager のように、信者を巻き込みながらナンバリングタイトルを重ねていく、というやり方も全然あるでしょう。

で、逆に言えば、そうした展開可能性への「信頼」を、PC Building Simulator の制作スタッフは既に勝ち得ているとも言える。この点については、前述したように細部を細やかに作れる、面倒くさい点をきちんと面倒くさいものとして定置する、というゲーム性そのものへの被リスペクトがあるのでしょう。

上図のように、メーラーを中心にゲームを進行させていく、という点については、本当にある意味でFootball manager っぽいですが、こうした「静的」なゲームであればあるほど、プレイヤーに自発的にプレイを持続させる、っていうのはなかなか難しいですからね。

上の画像内のメールの文面だけをとっても、やはり面白い、と思うし、文章を日本語に翻訳されたスタッフの方も、非常にいい仕事してると思います。

…………………………
と、ここまでで大概のことは語り尽くしたつもりなんですが、改めて、では大元のゲーム自体の面白さは結局どこにあるんだ、という点に話を戻すと、それはやはり、繰り返しになりますが、自作PCユーザーとして、普段扱いもしないような各種パーツに触れる機会をゲームの中とは言え持てる、ということなんでしょう。

この点においても、今回のPC Building Simulator のもたらした恩恵は計り知れない。ちょっと、自作に興味はあるけれども、配線一つ間違うだけでPCが一切起動しない、うん、ともスン、ともパソコンが反応しなくなる可能性のある実際の自作を始める前段階として、脳内シミュレーションを行うための教材、としての価値も同時にありうるわけですから。

ゲーム内キャリアモードの展開としても、そうした自作にまつわる諸要素を、一つ一つ検証し、何故その事態が起こっているのか、についてきちんとしたリテラシを身に着けていく必要性の方へと発展していきます。

で、その過程で、一つ一つの案件のクリア方法自体もオープンになってくるんですね。

上図は3DMark を2351にする、という課題ですが、この場合2351以上なら何でも良いわけで、まあ必要以上に上げる必要もないんですが、NvidiaでもAMDでも、どの世代のグラボでも2351以上なら良い。

だったらこないだ別の顧客のPCから入れ替えたあれを流用して……、何ていう光景が実際のゲームの日常です。

一方で、この辺のゲームバランスはまだまだ最適化不足、なことも前述したとおりですが、他方で、ゲーム内キャリアモード自体の行き着く先は、修理依頼ではなく実際に一から自作PCを構築すること、に当然帰結していきます。

このプロセスを、仮に実際に自作PCを行ったことのないプレイヤーがクリアしたとすると、もうほとんど、実際のパーツの配置、配線のつなぎ方などの基本的な要素については理解した、といってもいいほどの知識を身に付けているんじゃないでしょうか。

絶望の図、何が原因か指示してくれるだけまだいいか

まあ本当に細かいところまで指摘すると、OS用のHDD交換しろって言われてんのにデータの入れ替え必要なかったり、CPUにリテールクーラーついてなかったり、オンボードからグラフィック用の配線を繋げられなかったり、と、これを教材として使用した場合に起こって来そうな細部は幾つかあるんですが、ひとまず許容できる範囲でしょう。

で、さらにその先の深部に一つだけ指摘するとすると、やっぱりこれ、自作PCにまつわる本当に本質的な一つの要素だけは抜け落ちているんですよね。

このゲームは顧客のPCの壁紙たちとの旅路でもある

なんかもったいぶっているようなんで結論を先に申しますと、ズバリ、足りない要素っていうのは「自作PCユーザーのかく汗」、ですね。

………何いってんだこいつ、と思われるかも知れないのですが、これ結構重要な要素です。

もう少し具体的に言えば、硬質なケースを抱きかかえたときのずっしりとした重さとか、
CPUクーラーを上手く付けられずにひっかき傷だらけになった指先とか、マザボとケースをつなぐ電源スイッチ用の配線の挿す場所とか、要は、作業台もない自室の床の上で汗だくになりながら地面に這いつくばる、多くのジサカーにとってのありがちな身体性、フィジカルな要素はそこには無い。

いや、当たり前といえば当たり前の話なんですがね、というか、今、上に述べたような要素はすべてゲームとしては不必要でしょう(笑)。

まあエナジードリンクメーカーとタイアップして数時間働いた後の栄養補給、くらいはアリかも知れませんが。記事冒頭で書いた家具の充実、なども含め、今後このPC Building Simulator が辿りそうなゲームとしての進化は幾つかあると思うんですが、わたしはこの、フィジカルな要素の欠如、という一点を、このゲームの最大の特徴として、かつ記事自体の結末に取り上げるべきテーマとして、最後に拡大解釈してみたいのです。

たとえば、自作PCという行為の何が楽しいのかって考えてみる時、一つ一つのパーツがどういう機能性を持ち、それを組み合わせることで何が出来るか、っていうデスクトップ上の性能を、最終的な目的として「妄想する」ことが楽しい、っつうのは一つの結論だと思うのですが、やっぱりその過程で、外観としての美しさ、機能美を前提とした全体の設計を俯瞰する、という(最近で言えば各々のパーツ自体を光らせる、とか)視覚的な要素も、組み合わせを考える上での楽しみの一つですよね。

ですが実際には、一つ一つのパーツには個別の「重さ」があるわけです。剛性と精度を併せ持つケースとかって、マジでクソ重いですからね。割とリアルな話、今後PC Building Simulator がシミュレータとしての機能を評価される対象となる時、この「重さ」をグラフィック上の質感としてどのレベルまで表現できるのか、っていうのは重要な点になってくるのではないかと思います。

そこを表現することで、
PCの中で、
PC自体を組み立て、
組み上げたPCを立ち上げ、
PC内アプリケーションを実行する、
というある種倒錯したシミュレータとしての要素が際立つ、と思う。

で、ここまで読んで頂いた方にはお分かりのように、よくよく考えたら自作PCという行為自体がある種の「脳内シミュレーション」なんですよね。

だから、このPC Building Simulator というゲームは、ゲーム内でゲームを実行できる可能性をゲーム自体が持つのと同様に、シミュレーションのシミュレーション、なわけです。

だからこそむしろそこに、大元となる自作PCユーザーの体、パーツ一つ一つの重さという質感、は敢えて入れておけ、というのが、今後このゲームがゲームそのものの魅力を高めるにあたっての一つの指標として記事冒頭から筆者が主張していることでもあります。

GigabyteマザーにCryorigのクーラーは美しい

最後だけ、なんかやたら偉そうになってしまいましたが、以上が、私のPC Building Simulator に対する雑感です。

改善案、など幾つか試しに挙げてみましたが私の意図など関係なく現時点でほとんど完成している出来だと思いますし、日本語化も問題なく使用可能なので、少しでも自作PCユーザーの体に興味のある方であれば買って損はないでしょう。

また、
シミュレーションの中のシミュレーション、であってもマーケティングはマーケティングとしてむしろ最前面で機能しますので、今後の取扱パーツメーカーの拡充、プレイヤーキャラクタの生活周りなどへの協賛メーカーの拡大なども含め、ゲーム内に無限の可能性があるように見えるのも上に述べたとおりです。

ケースのサイドパネル開け放したままファンが回るのを見るときのあの感覚、ランダムで送られてくる他人のPCに色んなパーツを当てはめてみたい、と、そんな雑多な要求をお持ちのPCユーザーの方は、これを気にこのPC Building Simulator をきっかけとして、自作PCの世界に一歩足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

コメント

  1. 通りすがり より:

    アーリーアクセスなせいもあってかバグ多いですねこのゲーム。面白いだけに残念。

    1からPCを組み立てるって案件があるんだけど苦労して組み上げてもOSが起動できませんと出て詰み確定っぽいです。OSなんてパーツないし。

    • tanemoto_endou より:

      通りすがりさん、コメントありがとうございます。
      いや、最後に起動したのがもう半年ほど前なんで、
      若干うろ覚えのところもあるんですが、
      自分は一から組み上げまで出来たんですけどね。

      このゲーム、結構仕様が細かいので、
      確かUSBからのインストールだったかな?
      初めに入れなきゃならなかったと思うんで、
      もし差し使えなければ試してみて下さい。

      ……って、何かリアルの自作板の返信みたいになっちゃいましたね(笑)。
      こうして交流できるのも「シミュレータ」的な要素という事なんでしょう。
      普通にゲーム側のバグだったらごめんなさい。
      これ以上は分からないっす。
      しかし、微妙な設定を確認しあわなければならない、っていうのも、
      本当に自作PC的ですね~。
      何にしてもコメントありがとうございました。