塔の秘密を探ろうとするオカルト雑誌編集者「リタ・キャバリエ」

Mimesis of Frautal

VR1126年生まれ 女性

リタ・キャバリエは、スレッドのバルシアンに本社のある「アンサイト・エクスプラネット」に所属する雑誌編集者である。アンサイト社の発行する「廃墟・遺跡」シリーズの企画の一環として、ファーブルの塔の取材を繰り返し行っている。

彼女自身は(というより、アンサイト社の基本的な方向性としては)、ファーブルの塔を「現代における遺跡建築の試み」として一貫して批判しており、各国がそれについて承認し、積極的に人員を投じていることを「現代フロウタール七不思議」として理解不能な謎と位置づけている。

また、当のリタ・キャバリエ本人はと言えば、バルシアン大学の社会学部を出てすぐにアンサイト社に就職してからの四年間をファーブルの塔、の取材、研究に捧げており、彼女自身の人格や人となりを伝えるより、「廃墟・遺跡」シリーズの中で言及された人夫たちの証言とそこから類推されるいくつかの結論を記述する方が返って彼女の生涯の説明としてふさわしいとも思われるので、ここでは塔建築の目的に関する現時点での類推と憶測をまとめておく。

1 言語再統一説

リタによるシリーズ連載は、このザン教公式の発表である「言語再統一説」を疑うことから始まっている。その疑義の根拠として、数年の間、ファーブルの塔を出入りしていたイスのガジアンスの職人たちから、中に何も無いこと、周囲にある塔の基幹部分としての壁の建築ばかりを行わさせられていたことなどが証言されている。

他方で、リタは対立する側の主張、即ちエスクケイルにあるザン教の司祭からも同時に取材を行っており、今、上に述べたことに全く妥当性はなく、ン・テラの言語に近い形での振動書の読解、演奏を主眼として、最終的には巨大なライブ会場のような場所を作ることになる、というかなり踏み込んだ内容の反論も引き出している。

2 災害用シェルター説

シリーズ連載の第二弾は、ザン教の司祭の言うように本当にライブ会場にするのならば、十年も中に何も作らないのはおかしい、という継続した疑義によって展開される。

そこで根拠とされるのは、エロイーズのマンションからやってくる特殊な漆喰の製造者、女性職人たちによる作業内容であり、彼女たちが外壁に対し幾重にも防水加工を施したと証言していることから、来たるべきヴィジョン・クライシスに備え、何らかの大災害が起こったときに一部の人間を収容するための施設のようなものを作ろうとしているのではないか、という類推が示される。

3 (石棺による)危険物隠蔽説

シリーズの第三弾は第二弾の著述内容をそのまま引き継いだもので、何かから身を隠そうとするのとは逆に、既にある何かを隠そうとしているのではないか、と主張している。

これは、主にスレッドの周辺警備用の人夫のアルバイトに応募した住民から示されたものであり、過去の経歴の中に、スレッドの軍関連の仕事に従事していたことのある者は、ことごとく排除された、という事情から類推されている。

複数の証言者によって挟まれるこの疑いは、もしも中の敷地に爆発物などの危険な対象が埋まっている場合、軍関連の者であればその事実に気付き、不必要な追加給金を請求されたり、内部事情そのものを暴露される可能性があるからだ、と強い口調で言及されるが、だとすれば、イスやエロイーズの職人たちも同様のリスクを負わされている話になり、いくらなんでもそのような無茶をザン教の側は行うまい、として、いささか否定的に論及されている。

4 (何らかの)人体実験場説

シリーズの第四弾は、他の証言者による根拠の提示はなく、完全なリタオリジナルの論評となっている。

ここまで述べてきたいくつかの視点を手掛かりに、リタは、そもそも「言語の再統一」を試みたこの塔の建設それ自体が、何か壮大な実験の一部なのではないか、という新説を提唱する。

この説はその視点の斬新さと、仮に事実であればかなりスキャンダラスなものになりうる塔の構造を、いかにもオカルト雑誌らしい臆面のなさで主張した特集として、雑誌自体の発行部数を伸ばし、かなり広範に流布された。

西はイス帝国から東はエロイーズ、南はパルスプラントから北はディレリアに至るまで、フロウタールの縮図を作るように呼び集められた各地の働き手たちに対し、端からザン教と各国の指導者たちは何か彼らが触れ合うたびに観測されるデータ収集のための実験をしていて、最終的にはそれらの照合結果がこれもまた、各国の理に適うように分配される、という何の根拠もない暴論の類を、リタはかつてハングヘッドアイランドで行われた色相の転換者たちへの拘束と照らし合わせながら、説得的に論じている。

ただ、この論の弱点は、ここまでで繰り返し述べてきたように、視点の斬新さのみが評価される代わり、全く以て根拠に乏しい、ということである。

5 (完成後の)人体実験場説

リタ・キャバリエが、前回のシリーズ連載の好評を受けて新たにさらに押し広げたのが、現時点での最新部となるこの五番目の説である。

ファーブルの塔は、現在居る人夫たちに対する実験場であるばかりか、実際に塔が完成された後は、今度は塔自体が密閉された巨大な箱のようなものに変貌し、新たにその中に招き寄せられたフロウタール人民の「被験者」たちによって、さらなる本当の実験が開始される、というものである。

はっきり言って、この説をまともに信じる者はいない。むしろ、あまりにオカルト雑誌的なぶっ飛びぶりを示したせいで、リタ自身の書いた過去の記事の信憑性や評判すらも自ら貶めた、と言われているくらいである。根拠となるのは、塔の四方を完全に囲まれた、「形状」くらいか。

以上、見てきたように、アンサイト・エクスプラネット社に所属するリタ・キャバリエ女史の書いたファーブルの塔に関するいくつかの記事の中には、読者から好意的に捉えられているものもあれば、全くザン教側から相手にされる価値のない俗説、完全に妄想に近いものまで様々な幅がある。

勿論、全ての「説」についてそもそも検証のしようのない話なわけだし、他方で、塔そのものの長引かされる工期と同様に、一向に「真説」が樹立される気配のないことが、唯一、アンサイト社とリタの連載の長期化を助けてもいる。

当のリタはと言えば、前回、「塔の完成後の人体実験説」が自身の入社してから初めてと呼べるほどの酷評に遭ったのにもかかわらず、現在は全く新しい企画を模索中であるという。

どうやらその企画は、イスのステル・リ・タニウ遺跡やパルスプラントにあるアリウス・ハンの遺跡とファーブルの塔を結びつけ、論評しようと試みるものらしいが、それが実際にどのような内容になるのかは当人以外には定かではない。少なくとも、この件に関してリタが未だ変わらぬ情熱を持ち続けていることのみを確認して、実際に何も「確証」しないようではあるが、冗長になったこの記事のひとまず結びとしたい。

……(彼女自身の連載と同様に)次週へ続く。

一日の行動の優先順位

1 「情報源」を取材する

2 記事を編集する

3 護身用の訓練をする

4 先輩編集者に酒を飲みに連れて行かれる

5 「アンサイト・エクスプラネット」の過去記事を読む

6 珈琲とピーナッツで一息つく

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