箍の外れたカナリヤ「スフィア・モンタージュ」

Mimesis of Frautal

VR1126年生まれ 女性 色相の転換者

スフィア・モンタージュは、「未来からの殺人者」として知られる、ヴィト・モンタージュの妹である。末梢の抹消財団に於いて、寄付金の保管役、外部からの資金の受け取り役を担っている。

まず初めにお知らせしておくと、末梢の抹消財団に対する寄付は、非公式な形ではあるが、フロウタール各地のチルズレイ銀行の支店から振り込み可能となっている。

当然、チルズレイ銀行の各店舗は、それらの金を財団に対する寄付として受け取るわけには行かないのだが、「受け取り」のための末梢の抹消財団の口座は財団の各メンバーが国際指名手配された現在でも、依然として開かれたままなのである。

表向きには、この処置は、敢えて口座を使用した「取引」を行わせることで、そこに振り込まれた金を引き落とそうとする財団側の構成員を追跡しようとする「内偵」としての思惑があると理解されてはいる。

しかし、もしその思惑が銀行と各国側で共有された本意だとすると、実際にはその囮としての口座は全く役に立っていない、どころか、意図的に公開された思惑を愚弄され続けているというのが現状のようである。

その暗黙の追跡と逃避の場に、本項で述べるスフィア・モンタージュは必ず現れる。彼女は、「未来からの殺人者」として知られ、末梢の抹消財団の身内の中にしか姿を現さない兄とは対照的に、望みさえすればどこにでも現れる。

チルズレイ銀行は、上述のように財団に対する寄付を半ば認め、半ば認めない態度を採っているのだが、その際、寄付を申請する財団の支持者側に一定の期間後、金銭を返還する。スフィア・モンタージュの囁きが紛れ込んでくるのは、このタイミングである。

この「返還」の際に、寄付者側は財団側への確定的な寄付の申請を行うことができる。というのも、初めの銀行側からの振り込みのとき、「誤って」寄付額と所属する町村、コミューンの名を寄付者側に記載しておくと、その数日後、末梢の抹消財団の密偵の手を通して、本来の金銭受け渡しのための日時が、町村の掲示板に記載されて顕れるからである。

箍の外れたカナリヤ、というスフィア・モンタージュの異名は、この、財団の寄付者側への日時指定の文言から付けられている、というのは、一部の財団の追跡者にとってはよく知られている事実である。…彼女は、掲示板を通して或る「密告」を繰り返す。ただ、その密告の対象とは、外部と通じた内部の人間ではなく、外部の人間から付け狙われているべき、自らと自らの仲間を含めた財団の所在そのもの、つまりは寄付を受け取る実際の受け渡し現場の公開された指定、なのである。

彼女の箍の外れぶりは、上述のように掲示板に記載された文言の中に明確に示される。彼女は、秘密裏に行われるはずの金銭授受の現場を公開するばかりか、さらに加えて、掲示板にわざわざ野盗や地元の自警団を挑発するような書き込みを行い、その現場に第三者が現れるよう推奨しさえするらしいのである。

様々な目撃情報を総合すると、約束の日時に寄付者側がペリファレル・ディレイターの護衛と連れて行かれる「指定された」その現場で起こる出来事は、とても文章として起こせるような内容のものではない、という。常に三人で、イスの内乱の際に宝物庫から盗み出したとされる「イントレランス」を持つヨハネス・シーゲルの亡霊、と呼ばれる人物と、「二律背反の剣」を持つ敵方への攻撃役の男、黒く大型の傘を差すスフィア・モンタージュは金の引き渡し場所に現れ、寡勢をみくびって押し寄せてくる数名から数十名の暴漢を、一方的に殺害してしまう。

このような事情だったので、当のスフィアによるさえずりは、寄付金の正常な受け取りが行われた後も止む気配はない。

周辺の村の掲示板には、日時と場所を告知し、数名で引き渡し場に現れたのに誰も寄付を止められない点、幾度もの襲撃の失敗にも関わらずそれでも金に釣られて命を捨てようと試みる野盗がフロウタールから消え去らないこと、そうした「貧しい」民衆を生み出し続けるエロイーズやディレリア、スレッド、イス各国の経済構造への批判などが書き連ねられ、末梢の抹消財団が寄付を受けて糾弾された該当者を殺すか殺さざるかを検討する前に、予め社会の末梢神経を根絶しておいたのだ、などという一方的な主張が彼女の一存で表明されることとなる。

……わたしたちは、こうした末梢を抹消しながら、いずれはそうした不幸な末梢を生み出してしまう社会構造体の中枢へと辿り着く。一旦預けられた寄付は、切り離された頭と体を維持するために、見殺しにされた抹消からの救命信号なのだ。

神経中枢と身体の抹消が連絡を維持するための貨幣の兌換関係。スフィアが言うには、その訴えこそが、フロウタールの民衆から自発的に収められた末梢の抹消財団への寄付の意味合いなのである。勿論、それを真に受ける人間がどれほどいるのかは定かではないが。

ところで、一方的な書き込みを掲示板に貼り出すスフィアに対する印象とは別に、実際の彼女の姿形はと言えば、寄付の受け取りの日時と場所を逐一公開している事情から、一定の覚悟さえあれば「見学」可能となっている。

黒い衣服を身に着け、定めた距離よりもその現場に近づかないことを条件として、スフィア自身はむしろ、その寄付の現場を公然に晒したいようでもあり、「今会える転換者」として、スフィア・モンタージュはぺリファレル・ディレイターの中でも極端に身近に観察できるメンバーの一人でもある。

末梢の抹消財団の悪名が広がる以前は、彼女は服飾デザイナーとしてザイスで活躍していたとの評判もあるほどで、スフィアが、民間に視聴可能な状態で現れた時の服の着こなしは、一部の人間の憧れの対象となってもいる。

時にはチルズレイ銀行の白鴉のように仮面を身に付けたり、時には常に携行する武器としてのムチに合わせ女王様風味にしたり、組み合わせは多彩だが、どちらかと言うと若い女性より少し歳の行った淑女からの熱い支持を受けているようだ。

ザイスにあるエロイーズの官僚用の高級ブティックには、「夏でも涼やかな黒」をテーマにして展開されたアシンメトリーなカットソーやタイトスカートが、ブランド名を伏せられて並んでいる。

一節によると、それらの縫製された衣服の一部は、末梢の抹消財団へ加入前のスフィアの試作品をベースに、新たなスフィア本人の目撃情報とすりあわせて縫い合わせたものであるらしい。尤も、それらを敢えて「意識して」、エロイーズの貴婦人たちが着ている可能性は低いのだろうが……。

一日の行動の優先順位

1 寄付の報告を受ける

2 寄付の現場に行き着く日時を決める

3 掲示板に檄文を書き込む

4 ベースの練習をする

5 愛人を調教する

6 傘を差す

SPECIAL
5947947
闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
214
空間時間
15
保持スキル鞭術調教詭弁籠絡

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