開発段階からMODを意識した構成、ゲームエンジンの搭載などを考慮しているというBannerlord。こういうユーザーフレンドリーな状況は率直に言ってとても嬉しいし、この先何年も遊ぶ幅が尽きないのではないかと期待が膨らみますよね。
2021年3月追記:結局、記事執筆時点から一年ほど経ってリリースされたアーリーアクセスを遊び尽くしました。最新に近いヴァージョンでのプレイ録としては、以下のリンクをご参照下さい。
以下の内容は、そうしたアーリーアクセスが始まる前段階の予備学習のようなものです。とは言え、何も分かっていない段階での模索振りも(自分の中で)面白かったんで、これはこれでひとまずこのまま残しておこうと思います。
また、この記事自体の内容は、すべてSTEAM製品ページ内の、Taleworldsブログ記事からのまた引きになります。特に、各国の詳細な設定については、本記事を読むよりもそちらを参照した方が早いと思うので、記事内のブログへのリンクを場合によってはたどって頂ければと思います。(この記事内のすべての画像はその記事内からの引用であり、画像の著作権もTaleworldsに属しております)。
1 カスタムバトルと協力プレイ
詳細は「カスタムバトル」及び「コミュニティからの質問」参照
まず、マルチプレイの一つの形として、今回は発売後に協力プレイも用意されるようです。
そのための唯一の方法として「メインプレイヤーの戦闘に他のプレイヤーが参加できるものの、自分でキャンペーンマップ上で移動することのできないシングルパーティー協力プレイ」という内容が上記の記事リンク内で提示されておりますが、勿論シングルプレイが主幹のゲームであるにせよ、こういうオンライン要素をも含んだ拡張は楽しみが広がりそうです。
さらに、カスタムバトル、という色々なダメージ値などを試して見るための完全なエキシビジョンモードも搭載され、その中で記載されていることとして一つ興味深い点は、例えばMODをユーザーが開発する際にそれらの要素を試す場としてそのカスタムバトルを利用したりすると思うのですが、そのMODを構築するためにユーザーが言語を扱おうとする時、Bannerlordはオブジェクト本意な言語としてのC# 言語を使用しているため、MODコミュニティにとっては非常に扱いやすいものになっている、という指摘ですね。
2 MOD構築について
と、言いましても、私自身はコンピュータ言語などはまるでわからないズブの素人なのですが、とにかく、TaleworldsがはじめからMODコミュニティのことを考えて、「新しい仕様を実装する際には必ずMOD化可能かを考える」。という開発姿勢にただただ感銘を受けるのみであります。
その延長で、上記リンク先にはさらにそうしたMOD構築のための予備知識のようなものが記載されておりまして、今回はオリジナルのゲームスクリプトを直接編集する代わりに、新しいスクリプトをプラグインとして追加し、XMLデータファイルとして取り扱うことが可能になっている、と。これによって、更新の度に作り直さなければならない、という労力もだいぶ取り払われうる、ということです。
さらに、そうしたMOD構築のための開発を可能にするためのオリジナルのゲームエンジンの中で、今回は全体としてCPU依存率が高くなっている、ということなのですが、この項の後で述べる「インバースキネマティクスシステム」や、戦闘計算、その他の要件による負荷を軽減するための最適化も随時行われており、「フレームの60~70%は完全に並列化されており」、次世代CPUのすべてのコアを活用することができるそうです。
この辺りのことは、特に近年のCPUの他コア化事情に鑑みて、「キャラクタ800体を60fpsで描画できるようにする」という公式の目標も含め、まあ実際の発売がいつになるかはわかりませんが(笑)、その時の最先端のCPU、GPUを活用してみたくなるところでもありますね。
3 布シミュレーションとGauntlet
詳細は「Ülker DikmenとのQ&A」及び「Gauntlet」参照
で、ここら辺りの事情は、Bannerlordのために開発されたTaleworldsオリジナルのカスタムコードにも共通しているようでもあります。
布シミュレーション、という物理演算システムと、Gauntlet、という独自のUIライブラリは、上に述べましたように負荷を抑えながらも、ユーザーにとっての扱いやすさまで考慮されている。
特にGauntletの方は、Ui自体がXMLファイルとして管理されることを可能にしており、さらにXMLファイルから別のXMLファイルを参照したり、各個の見た目を指定する別のXMLファイルを用意したりすることで、特定シーンのみにタグ付けされていちいち別の状況には個別にUIを指定し直さなくてはならない状況を回避しているそうです。
Taleworlsとしては、そうしたオリジナルのコードを開発することで、引いてはその後のMODコミュニティの各要素に対するアプローチのしやすさまで担保した、ということになるのでしょうか。
この辺りの厳密なことは、繰り返しになりますが当方はズブの素人なので詳細にわかっていない部分も多いのですが、「同エンジンを使用した別ゲームまで作られうる」と豪語する、全く新しい仕様の、且つユーザーフレンドリーなシステムの中でゲームを楽しませてもらえる、というのは、TESのようなシリーズを例に取るまでもなく、コミュニティにとっての最適な環境なんでしょう。
4 インバースキネマティクス・システム
詳細は「インバースキネマティクス」参照
その延長で、特にアニメーションの記事に関して面白いな、と感じたのは、上記のICシステムですね。
衝撃の方向に応じて異なる挙動を取らせる、というこの盾防御に実装された仕組みは、そこまでこだわるのか、とプレイヤー側にリアリティのあるサンドボックスを想像させるのには十分すぎるほどでしょう。
このローファンタジー感覚、厳密に物理演算させようという姿勢が、そのままゲーム側のシステムとして生かされ、翻って、プレイヤーとしてはその「足場」を基にして大上段の戦略まで整えざるを得ない感じ、こここそがMount & Bladeの独自性であり、オープンワールド中世RPGサンドボックスシミュレーション、としての本筋ですよね。
で、その辺りのことは、たとえば弓矢の装填から発射までの一連の流れまでのアニメーションにも特に顕著です。(詳細は「Cem ÇimenbiçerとのQ&A」参照)
「矢をプレイヤーが発射できるようになるまで矢筒に残していた挙動を、プレイヤーが矢を手にできる時点で矢筒から即取り出されるように変更した」という細かすぎる変更点は、「クロスボウの再装填が”弓の準備”と”矢弾の取り付け”という二つの段階に分割される」という事態に帰結するらしいのですが、普通の兵種なら一段階目の動きの間、動き回れない所を弓兵は動き回れる、点なども含め、それ自体が場合によっては戦略を全く変えてしまうような変更でもある。
いや、まだまだ発売日すら決まっていない段階でこいつは何いってんだ、と言われるかもしれませんが、そうしたアニメーションの微細な変更が戦略上の重要な分岐になるところまでを想像し、今から一軍を指揮する想像をしておくのも一興というものでしょう。
5 エネルギーとダメージ
詳細は「武器の物理演算処理」参照
最後に、既に微に入り細に入り公開されている、Mount & Blade2のダメージ算出システムについて触れておきたいと思います。ここの情報が、また詳細かつ精密で面白い。
上記リンク先の記述に先立って、公式のダメージ算出のための仕組みが、また別のブログで公開されている物理演算の仕組みを強く参照し、再現しようとした旨が記載されているのですが、そうして全て手の内を明かす感じ、それでも自分たちの構築しようとしているものに対する絶対的な自信を保持し続けている感じは、別記事でも書きましたが、ユーザーフレンドリな環境を構築しようと模索していることも含め、率直に言って格好いいの一言ですね。オープンソース感覚というか。
ジョージ・ターナー氏の記事に対する強烈なリスペクトによって構成されたダメージ算出のシステム、はまあリンク先を見てもらえれば早いのですがこちらでも一応概観すると、
まず武器による攻撃には、「斬撃」「貫通」「打撃」の三種類のダメージがあり、
そこに、シリーズにとってはおなじみのスピードボーナスが乗り、
これもまた同様にお馴染みの「命中点」要素によりダメージ量が大きく変化し、
それらの複合的な要素によって算出されるべきダメージ値は、物理演算のシステム上、蓄積エネルギーと運動エネルギーという2つの概念で処理され、これが命中時にどのように転移するかという連続的な計測によって、場合によっては防御側を粉砕し、場合によっては攻撃側により深い「アタッカーのスタン状態」をもたらすというわけです。
そこで導き出されている結論とは、「Bannerlord ではランダムの隠し変数を使うことなく、リアルかつ没入感を生み出す物理演算に基づいた戦闘システムを構築することが可能になっている」ということです。さらに言うと、その特性と長所を理解することで、MOD製作者はより楽しんで新しい武器などを制作することが可能になる、らしいです。
何にしても、もうここまで来ると、ゲームシステムの構築というより、本当に物理学の授業のようですね(笑)。勿論、現在のオープンワールドと呼ばれるPCゲームのほとんどは、そうした現実の物理学的知見に裏打ちされて構築されていることも疑いようのない事実だとも思われますが、それらの要素を、光学的なエフェクトとしてのみならず、また、キャラクタの四肢などの見た目上の動作としてのみならず、きちんと、ゲーム上の当たり判定を伴った形で、アクション要素とサンドボックス的要素を厳密に連携させてシステム構築しようとしている実例としては、今回のMount & Blade 2 ほど緻密なものは過去にありえなかったでしょう。
同様の「中世剣戟ARPGサンドボックスシミュレーション」としては、真っ先にダークソウルなどが思い浮かぶところですが、それでもここまで動作に関するアニメーションの厳密さはないですよね。しかもそれを、最終的には800人単位での描画処理で行う準備がある、というね。これを究極と呼ばずしてなんと呼ぶのか。
6 まとめ
以上、別記事も合わせると大きく三項目にまたがって現状で把握できるMount & Blade 2の各要素をまとめ直してきましたが、とにかくこれらのことについて発売日前から期待しているだけでも、ちょっとしたインディーゲーを遊ぶのと同じくらいのボリュームがあるかもしれません。
それらのことを支えているのは、これもまた何度も繰り返しになりますが、Taleworlds側のオープンソース感覚、手の内を開示しても全く揺るがない自信と、初めからMOD構築による世界観のさらなる広がりを前提としたユーザーフレンドリーな開発姿勢があるのでしょう。
公式の日本語化されたブログの方でも、まだまだ随時情報が公開され続けていくようですので、それらの情報によってまだ見ぬゲームの全体像への想像をたくましくする、という「遊び」自体も、逆に発売日のアナウンスまでの道のりが長引けば長引くほど、それだけ勿体ぶらせられながら続けられるというわけですな(笑)。
そんなことより早くやりたい、という気持ちもどこかで持ちつつも、もはや発売自体が一つの到達点であるような、理想を実現するためには幾度の作り直しでも辞さないような、究極の作品を待ちわびつつ、この記事の結びにしたいと思います。では。
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