打ち寄せる波の全ての数を数える浮浪者「トゥーサン・ザザ」

Mimesis of Frautal

VR1080年生まれ 男性

トゥーサン・ザザは、クセナルージュとユセルムの間の海岸沿いに住む老人である。来る日も来る日も、「縮れ波の海」と呼ばれるエロイーズ北岸の浜辺に座り込み、数秒に一度足元に弾ける波の形だけを見つめていた。

彼が何故、そのような営みを始めたのかは定かではない。営み、というのは、彼が毎日欠かさず行っているその観察が生命をつなぐのに役立ったからである。「じいさん、どうだい? これから漁に出るんだが、最近の海の調子は」。などと、冗談半分に近づいてくる若い漁師に、「ああ、二、三日は大丈夫だな」、と適当に返答すると、軽いまじないのようにでも思うのか、「そりゃすまんな」、とさらに答え返して、近海で取れた魚を、釣りもせずにただ海を見つめている老人に分け与えてくれる。そのようにしてトゥーサンは、この先いつ終わるのかも分からない自身の生涯を、淡々と見守っているのだった。

ただ彼は、そうして海を見つめている「だけ」ではないらしい。これは彼の友人の浮浪者の言葉をまた聞きした近隣の住人の話であるからにわかには信じがたい部分もあるにはあるのだが、トゥーサンは打ち寄せる波の数をひたすら数えているうち、それらの波を7776種の波形に分類し、1つ目の波をそれらのうちの一つに見定めた次の瞬間、新たに飛沫を上げて消失した波を捉え、さらにその数秒後には別の波を視界に収める、といった具合に、延々と分類し続けていたのだという。

さらにそのトゥーサンの友人が自慢気に語る所によると、彼は波の分類の仕方、自体も仲間内には懇切丁寧に教えてくれるらしく、彼によると全ての波は、1 初めに打ち寄せた波2 その波が海へ返っていく様3 足元に弾けた微細な波しぶき、のたかだか三種の形の和、として捉えられるのだという。7776種、というのは、ここらの浜辺の波の高さを上限にしてその中で細分化しているだけで、別の海ではまた別の数え方が、それぞれの天候に応じて顕れるのだろう。

繰り返しになるが、このような波の数え方を、トゥーサン本人が行っていたのかどうかは、また聞きのまた聞きである故定かではない。しかしながら、少なくともユセルム近辺に住む者にとってはトゥーサンは浜辺の観察者として既知の存在であり、彼が漁師たちに重宝がられている、というのも事実のようである。ただ一方で当然のごとく湧き上がってくる問いとしては、既に波の分類を終えてしまった彼が、では一体今は何に取り組んでいるのだろうか、ということだ。

ユセルムの海岸沿いの高台に住む村人は、トゥーサンの友人からのまた聞きとして最後にこう付け加える、「彼は現在、今までに得た知見を活かし引き続き波を数えながら、同時にその波が打ち寄せたときに空に漂う雲の形を分析している」。このまま放っておくと、彼がこの世界の海や大地を覆う気象全てを解析してしまうのも、(彼の信奉者たちからしてみれば)時間の問題、なのかも知れない。

一日の行動の優先順位

1 波を見つめる

2 空を見つめる

3 自身の生涯を思う

4 若い漁師と絡む

5 体の臭いを嗅ぐ

6 好物の焼き魚を食べる

SPECIAL
1854111
闘争華美飽食享楽不寛勤勉渇望
3111
空間時間
15
保持スキル解析

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